アーティストの良さをそれぞれの角度から語ってもらう企画「某アーティストのマニアに聞きました。」 #ボーマニ。
今回は「銀杏BOYZ」について、東京を中心にDJ活動をしている青島将司さんにお話をお伺いしました。
ー今回は銀杏BOYZを語っていただきます、青島将司さんに来ていただきました!いい笑顔です、よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
-本日もお酒ありきの会でやりたいと思います。
ゆるりと。
-はい、ゆるりとやりましょう。銀杏BOYZを語っていただく前にご自身の自己紹介をお願いしていいですか?
わたくしはですね、青島(あおしま)改めチンタオと申します。DJですね、10年ほどやっておりまして、色んなパーティ手掛けながら、遊びながら、酔っぱらいながら潰れてという活動をしております。
-それがもう音楽と共にある姿ですね。
そうなんです。
-もともとは浅草のゴールデンタイガーとかでもね、スタッフをされていたりとか。
はい。
-ありがとうございます。その中で、今回チンタオさんも色んなバンドとお知り合いだったりとか、お好きだったりすると思うんですけど、その中で銀杏BOYZを語ろうと思ったのはどういった理由になりますか?
銀杏BOYZは、やっぱり自分の人生の中で最も影響されたアーティストなので、これがボーマニにふさわしい、これを語らずしてもう僕の音楽は語れないなということで、まずは銀杏BOYZを選びました。
-青春ですね!
前身のバンドGOING STEADYが突如解散になって、活動開始したのが銀杏BOYZ
ー銀杏BOYZは知っている方は多いかなとは思いつつも、知らない方のために銀杏BOYZを簡単に紹介してもらってもいいですか?
銀杏BOYZ(略称:銀杏)はまずですね、前身のバンドにGOING STEADY(略称:ゴイステ)というバンドがいまして。
ゴイステが人気絶頂の中でね解散したんですよ。
全国ツアーがこれから始まるぞっていう初日の日に、「突然解散しまーす!」って言って、ファンは「えーー?!?って嘘でしょー?!?!」とすごいブーイングで。
でも何とか今日はライブやりますってなって始まった時が銀杏BOYZだったんですよ。
そのときは峯田和伸さんのソロ活動として始まって。
そこから前任のベースの安孫子真哉さんだったり、ドラムの村井守さんといったゴイステのメンバーに、新しくチン中村さんというギタリストが加わり、銀杏BOYZというのは結成されました。
-ありがとうございます。そんな人気大絶頂の中でしかもツアー初日で解散します?笑
「嘘でしょ?!」ってファンも戸惑うし、でもやっぱりアーティストとしてツアーの中で解散したくないとか色々あったんでしょう。
その中で解散を選んで、でもそのライブはもうソールドアウトしちゃってるしお客さんも入れちゃっているし状態で。
もうなんとかしなきゃということで、メンバーはとりあえずベースとドラムだけ入れてギターもやって、ってとこから始まってますね銀杏BOYZは。
-伝説だ…。
銀杏BOYZは「青春パンク」という5文字だけでは片付けられない
ー銀杏の曲はどんな曲調なんですか?
銀杏BOYZは、皆さんよく言うんですけど「青春パンク」と言うんですよね。
-私も確かにその印象がすごい強いです。
まあ確かにそのくくりにはなるんですけど、僕はもうその5文字では片づけてほしくないんですよね。
-というと?
色んな事に挑戦しているんですよ。本当に。
-そうなんだ?
パンクとかハードコアの要素も確かにあるんですよ。
そういう激しい曲だったりノイジーだったりする曲もあるんですけども、結構フォークな感じのアコースティックな演奏もあったりだとか、アルバムによっては打ち込みを入れたりとかもしていて。
-ほう!
で、そのノイズの作り方もシンセサイザーとかサンプラーを入れた形で。
今まではバンドの生演奏ガチャーンってやる形だったけれども、エフェクターをすごい数重ねたりして、打ち込みの要素も入れてくっていう。
-うん。
バンドとして進化して常に変わっていく、常にアップデートしていくというものがあるんです。
なのでもう銀杏BOYZってジャンルとして聴いてほしいんですね。
-青春パンクってジャンルじゃなく、銀杏BOYZというジャンル。
全部を含めて銀杏BOYZというジャンルってくらい楽曲によって本当に違うので、アルバムの通しの流れがすごく面白かったりするんですよね。
まずはファーストアルバム『DOOR』と『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』から聴いて欲しい
-印象的なアルバムありますか?
やっぱり、まずこれを聴け!ってなるのが、ファーストアルバム『DOOR』と『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』。
2枚同時に出してます。
-いきなり2枚同時って自由だな(笑)
そう、2枚で1つの作品だと思ってて、次のアルバムがすごく変わるんですよ。
『光のなかに立っていてね』ってアルバムなんですけど、いきなりもうファンを置いてくような。そこで既に打ち込みの要素が入ってたりする。
-へぇ…なるほどなー。じゃあどれか1つのアルバム、ってよりかは全部をまず聴いてくれっていう?
そうです。
-わかりました、ありがとうございます。ではリンクを貼っておくので、皆さんに聴いていただきましょう。
それでですね、さっき言ったように2013年にセカンドアルバムを出すんですよ。これもまた2枚同時に出して、ライブリミックスも出すんですよ。
ライブアルバムって、色々あるじゃないですか。
普通にライブで録ったやつをそのまま出すものとか。
これに関してはライブリミックスという形で、録ったライブの音源を、さらに自分たちでアレンジして色々編集した、ライブなんだけどもまた新しい要素を入れる。ノイズ入れたりだとか、色々複雑な感じにしていくみたいなアレンジもあって、1枚通しても面白い。
-どのアルバムですか?
『BEACH』というアルバム。
これがね、とにかくいい意味で気持ち悪いんです、違和感のあるアルバムで。
-こんなこともやるのかー!みたいな?
そう、「えっ、ライブのアレンジ・リミックスってこういう風にやっていいんだ?!」みたいな。
-はいはいはい。確か流血ライブとかもありましたよね?
そう。
血だらけだわ、骨は折れるわ、メンバードロップキックするわ。結構無茶苦茶なライブですね、はい。
-人によっては何だろう…。CDの曲を聴きに来ているはずなんだけれども、あれ思ってたのと違う、って思っちゃう人もいるかもしれないんですけど、その中で多分チンタオさんはプラスに捉えているかなと思っていて。
そうですね。
銀杏BOYZのライブは生でしか味わえない、本能むき出しのまま向かっていくものがある
-どういうところがそんなライブの魅力なんでしょう?
彼ら本人も言ってるんですけども、色んな渦巻いた感情が、ぐちゃぐちゃなものが一つになるものがライブなんだな、っていうのを気づかされるものなんですよね。
というのも、2020年8月にやった『銀杏BOYZ スマホライブ 2020』と言うスマホライブがあって。
僕は配信を見れなかったんですが、インタビューで読んで、渋谷La.mamaというライブハウスでまず最初は峯田さんが渋谷の街を歩きながら、それをスマホで撮ってたんです。
銀杏BOYZほど大きなバンドだったら演出でちゃんといいカメラ入れて配信やってもおかしくないけど、あえてスマホでやろうって言って。
音質の悪いものであえてやりたい
でも照明とかの演出はちゃんとこだわりたい
っていう。
あえて荒いものでやってく姿勢。
というのは現在はスマホの時代で、(コロナ禍だから)お客さんにも触れられない時代だから荒さで勝負する、みたいな。
-はあ~!
そのライブでも本当は男女関係なくぐちゃぐちゃになってモッシュしたりダイブしたり、汗だらけ、泥だらけな感じのライブをお客さんと楽しみたいって、本人達が言っているんですよね。
-いい意味で人間らしさがすごいですね。スマホライブも、日常からちょっとかけ離れているかもしれないけれども、皆の身近にあるような…言ってしまえば人間のあるべき姿みたいな?
そう、そうです!
飾っていないというか。
本能むき出しのそのままのもので向かっていく。
やっぱり生でしか味わえないものなのかなと。
もちろん他のライブでも他のアーティストさんでもそうなのかと思うんですけど。特にそのむき出しの部分が銀杏BOYZにはあるのかなと、僕は感じましたね。
-私、そういうむき出し感のあるバンドってコロナ禍の今でこそ最高だなって思ったりするんですけど。最初見た時はイメージと違うことが多いので、受け入れられなかったりするんですよね。チンタオさんの場合は、どういうきっかけで好きになったんですか?
きっかけは、中学生くらいの時に近所の友達の家に行って、お兄ちゃんが聴いてるんですよ。銀杏BOYZを。
-何か青春だなあ!
それがきっかけで「このバンド何?」って聞いたら「銀杏BOYZだよ、GOING STEADYだよ」って。
それから曲を聞いたり追っかけるようになって。
軽音部で僕自身がバンドをやっていた時に、同期の友達が「チケット取れたよ!だけど、急遽行けなくなっちゃったから行ってきなよ」って声かけてくれて。「まじか、嬉しい!」ってなって銀杏BOYZのライブに初めて行ったんですよ。
音ではずっと聴いていたけども、実際ライブどうなんだろうと思って行ってみたら、もうカルチャーショックでしたね。
人はぴょんぴょん飛んでいくので(ダイブですね)、人って飛ぶんだ?!みたいな思いだし。最初は衝撃だったけど、それ見て俺も飛びたいって思って。もうね、ぐちゃぐちゃになってライブに参加するいいきっかけだったなって思ってます。
-なるほど!テンション高まっちゃって、気づいたら自分も身体が動いてるみたいな現象ですよね!
そうそう、考える前に飛べというか、本能で「あーもう前に行きたい!(飛びたい)」っていう衝動になる、あれ。
-わかります、わかります。さっきチラッと小耳に挟んだところだと、メンバーさんもダイブする?
はい、ギターのチン中村さん。
北海道のRISING SUN ROCK FESTIVAL(通称:ライジング)でお客さんがモッシュしている前列のほうに、前のめりで突っ込んでくるんですよ。
ギターを持っていて手空いてないのに突っ込んできて、ステージの端のところに足かけて、お客さんがチン中村さんを支えて空中でギターを弾くっていう新しいギターの弾き方をしていたり。
このチン中村さんは他にもイカれたパフォーマンスが多くてですね。
-そうなんですか?
ROCK IN JAPAN FESTIVAL(通称:ロッキン)に出たときは、ライブ中にアフロヘアの自分の髪を切りだしたりだとか。
-ロッキンでやる勇気がすごい!私たち遊びに行く側からしてもロッキンってダイブ禁止だったりして暴れるには敷居が高いイメージなので、単純にすごいですね…(笑)
そうそう。あと僕が最初に行った銀杏BOYZのライブの「せんそうはんたいツアー」では撮影してたカメラに突っ込んで、ガラスが割れちゃってもう血だらけなんですよ。顔から血だらけ。
あとCLUB CITTA'(通称:チッタ)に出たときは、開演時に幕が上がっていくじゃないですが。その幕の上がる瞬間に両手で裾をバッって掴んで、カーテンが上がっていくのにぶら下がっていったりとか。
-えー!うそー!
「え?!何でそんなことするの?!」みたいな(笑)
-サーカス見てたんだっけ?!ってなっちゃいますね(笑)
「あれ?チン君跳びすぎじゃない?!」みたいな(笑)
結構無茶苦茶なパフォーマンスするんですよね。
-はいはい(笑)チン君何を思ってやってるんですかね?
いや、何も考えてないんでしょうね。本能で行ってるんだろうなあ。
-本能かー!
ええ?うそだろ?!みたいな、結構ライブ中にもでんぐり返ししたりとか、ぴょんぴょん跳ねたりとかするので、何か虫…みたいなというか(笑)
落ち着いていないんですよね、常に。
-今までの話で、銀杏BOYZは色んな事にチャレンジしてくれるバンドだなっていうことを感じたんですけれども、やっぱりバンドって曲ありきだなと思っていて、曲の魅力もありますかね?
銀杏BOYZのバラード曲からは優しさを感じ、物語、映画を観ているような気持ちになる。
そうですね、激しい曲も銀杏BOYZの良さではあるんですけども、逆に僕はバラードとかのほうが刺さったりするんですよね。
優しさだったり、物語、映画を観ているような気持ちになる。
例えば「漂流教室」って曲があって、それは友達が死んじゃったときの歌だったりするんですよ。
告別式では泣かなかったんだ
外に出たらもう雨は上がってたんだ
あいつは虹の始まりと終わりをきっと一人で探しにいったのさ
「漂流教室」/銀杏BOYZ
っていう歌詞は、考えさせられるなっていう。
人の死を直接表現しない感じが好きでしてね。凄く文学的というか、詩的な表現が想像力を掻き立てて、自分の解釈で捉えていく深さ。
作り手の願いや思いは分からずとも、聴き手の捉え方で曲の良し悪しは決めればというインタビューを読んだ事があります。
だからmooleeが聴く銀杏BOYZの聴き方でいいし、僕の聴く銀杏BOYZの聴き方もそれでいいと思っているんですよね。
-確かに今回「某アーティストのマニアに聞きました。」で話しているのも、うちらの解釈に過ぎないですもんね。
そう。けれど、青春パンクという色眼鏡で見て聴いて欲しくはない。これは僕の勝手な願いです。笑
で、銀杏BOYZって10代で聴いて刺さっているか刺さっていないかが結構大きいのかな?って説が僕の中であるんですよ。
-というと?
僕は10代で銀杏BOYZと出会ってて、一生聴くんだろうなって思う。
だって、10代で出会った音楽ってずっと染みついちゃっているんですよね。
もし僕が20代や30代になって初めて聴いていたらどんな風に思っていたのかなと考えていると、20代は感受性だったり価値観とかが10代とは大きく変わってきているので、もしかしたら好きになっていなかったかもしれない。
-なるほど!では今まさに聴いてくれている人たちって、10代の人には早め早めに聴いてくださいと言うことですね。20代30代の人に対してはどうしましょう?!
年代というよりかは、その人の環境次第で聴いたら刺さるかもしれない。特に、自分の生活に満足していない人ほど聴いてほしいかな。
僕もやっぱり10代の思春期に悶々として上手くいかない時期があったわけですよ。
そういう時にいつも心の支えでいてくれたのが銀杏BOYZだった。
僕は高校生のときにクラスに馴染めなかったんです。で、そういう時にチクショー、ぶっ殺してやる!みたいな。
あるじゃないですか、何なんだこいつら(周りの人たち)は!って思う時。憎みだったり妬みだったり殺意みたいなが生まれてくる。でも実際にそういうのは行動に起こせないじゃないですか。
湧き上がってくる感情を実際に行動に起こしちゃったらダメだし。じゃあ曲にぶつけてくれよみたいなのがその…何かあるんですよね。
-自分自身に湧き上がってくる感情の矛先というか、発散する場所として作ってくれていたような曲たち。
僕の中ではそんな気がしますね(笑)
-それがチンタオさんの解釈だ!
そう、感情によってマッチするタイミングはそれぞれであると思うんですよね。
例えば、会社行って上手くいかなかったなあ畜生、あの上司!もう!みたいなムシャクシャした時に聴いて救われることもあるだろうし、恋人に振られたらこの曲聴こう、とかもあったりとか。
-明日もがんばろう、って思えますよね。
生きていこう、っていう気持ちになれる。
-わかります。だから皆ね、転がってでも生きていってる。
そうなんですよ、皆不満とかぶつけにライブに来てるんだろうな、とかも感じています。
後半に続く
青島さんがおすすめの曲をプレイリストにしてくださったので、是非聞いてみてください!