アーティストの良さをそれぞれの角度から語ってもらう企画「某アーティストのマニアに聞きました。」 #ボーマニ。
今回は須田景凪さんを語っていただきます。Maakyさんにお越しいただきました。
ーよろしくお願いします!
よろしくお願いします。
ボカロP出身のアーティスト、須田景凪さん
ー自己紹介をお願いします!
愛知県在住のMaakyと申します。
もともとロックDJをやっていまして、mooleeさんが主催されているConnect Music Japanではとてもお世話になりました。
今は活動こそしておりませんが、音楽は楽しく聴いているのでそういう面ではお話しできるのかなって思います。
ーありがとうございます!音楽愛が強い方と認識していますので、是非色々なお話が聞ければなと思います!
ーでは、早速ですが須田景凪さんのご紹介をお願いできますか?
まず、須田景凪さんは元々スタジオミュージシャンになりたくて音楽大学に進学して、ドラマーとして活動してたんですけど、ある時限界を感じてしまったみたいでドラマーをやめてしまったんですよ。
そして、機材をすべて売り払って、パソコンとギターを買い作詞作曲を始めたという経緯があります。
ーそうだったんですね、知りませんでした!
そしてここからはご存じの方も多いと思うんですけど、2013年に“バルーン”という名義、ボカロPとしてニコニコ動画で活動を始めます。
代表曲の「シャルル」という曲は、ボーカロイド(通称:ボカロ)が歌っている原曲と須田景凪さん本人が歌っているセルフカバー曲2つを合わせたYouTubeでの合計視聴回数が1億回を突破しています。
ー1億ってなかなか無いですよね!
そうですね。
すごいのがJOYSOUNDの2017年カラオケ総合ランキングで一位をとっていて、10代だけの部門では、2017年から3年連続で1位をとっていました。
ーすごい!
今でも上位にランクインしているので、すごい曲なんですよ。
その中で、2017年にボカロじゃなくて自分の声で歌うために"須田景凪"という名前でシンガーソングライターの活動を始めました。
2019年にワーナーミュージック内のレーベルである前にきゃりーぱみゅぱみゅとかが所属していたunBORDE(アンボルデ)からメジャーデビューして、今はA-Sketchに移籍しています。
あとタイアップもいろいろしていて、有名なのでいうと『二ノ国』というアニメ映画の主題歌「MOIL」だったり、
『炎炎ノ消防隊』のアニメのエンディング「veil」だったり、
実写映画でいうと『名もなき世界のエンドロール』の主題歌「ゆるる」だったり、
最近でいうとテイルズオブシリーズの新作アプリゲーム『テイルズ オブ ルミナリア(通称:ルミナリア)』で挿入歌を、同じレーベルのフレデリックと共作で「ANSWER」を歌っています。
ー共作!!
そうなんです!
フレデリックとのコラボEPみたいな感じで『ANSWER』が出ていて、ルミナリアの曲をフレデリックが1曲、アプリで使われている曲で須田さんも1曲で全5曲入り。
最後の2曲がまたすごくて、フレデリックがカバーする須田さんの曲「veil」と、須田さんがカバーするフレデリックの曲「オドループ」がはいっているんですよ。僕はそれだけのために買ったと言っても過言ではないです(笑)
ーカバーはアツい…
「ANSWER」自体もすごくいい曲だし、他の収録曲で須田さんが歌っている「リグレット」もゲームのエンディングというか世界観にあっているというか、いい曲になっているんで興味がある方は聴いていただけたらと思います。
あと楽曲提供もしていて、ナナヲアカリさんの「ハノ」って曲だったり。
びっくりしたのは元SMAPの香取慎吾さんの「welp (feat.須田景凪)」と有名どころにもだしたり。
ー米津玄師さん含めボカロP出身の方って作詞作曲の能力が高くて、楽曲提供している方多いですよね。
そうですね。
ー今の時点ですごい情報量が多くて私自身とてもワクワクしているんですが(笑)Maakyさんが好きになったきっかけは何ですか?
きっかけは、ボカロPの"バルーン"の活動ではなく、須田景凪さんのほうだったんです。
大体の人はボカロを聴いていて、「あっ本人も歌うんだ」みたいなのが多いと思うんですけど。
たまたまタワレコへ行ったときに『teeter』というアルバムの一曲目の「mock」を聴いて、いいじゃん!て思って音源を買ったんですよ。
これタワレコあるあるなんですけど、聴いてよかったらすぐに買いたくなっちゃうという(笑)
ーDJあるある(笑)
そのあとに"バルーン"という活動していることを知って。
名古屋でDJ活動しているwari君が主催しているヨネハチフェスというボカロメインのDJイベントで"バルーン"のことを調べていたら「シャルル」ってflowerというボーカロイドを使った原曲と、須田景凪さんのセルフカバー以外にも歌い手さんが歌っている曲が沢山あるんですよ。
その中で、神田沙也加さんがカバーしていた「シャルル」が特に良くてって気がついたらハマってました。
ーなるほど〜!どんなところがいいなと思ったんですか?
そうですね。
本人は意図して曲を作っているわけではなくって、伝えたいことを自分の言葉で書いてるだけと言っているんですよ。
聴いたときに何でかわからないけどホッとしたり穏やかな気分になったりする
それでいて、曲調は明るく聞こえない曲が多いんです。明るい曲もあるんですけど、どちらかというとダーク寄りというか。
にもかかわらず、心にスッって入り込んできたりとか、聴いたときに何でかわからないけどホッとしたり穏やかな気分になったりするんです。
ほんと不思議なんですけど(笑)
ー特に印象に残っている歌詞ありますか?
最近出した曲の「パメラ」。
去年の10月くらいにボーカロイドで出した曲で、あっという間に100万再生されて、そのあと須田さんのセルフカバーも配信された曲ですね。
その曲に
だんだん独りが染み付いて
寂しさの感度も忘れていく
「パメラ」/バルーン (self cover)
っていう歌詞があるんですよ。
恋人と別れると最初は引きずったりするけど、だんだん忘れてきてもういいかな。みたいになるじゃないですか。この歌詞がすごく理解できるんですよね(笑)
あと「パレイドリア」って曲の
下らない理想で笑い合っていた
この日々の終わりに隣にいたいもんな
「パレイドリア」/須田景凪
っていう歌詞があるんですけど、やっぱり仲いい人だったり好きな人だったりの隣に居たいじゃないですか。
ーふとした瞬間の疲れたなって時に、安心できる人が隣にいてくれると嬉しいですよね〜!
そうなんですよね。楽曲自体「俺がそばにいるぜ」みたいな感じじゃなくて、スッっと後ろから支えてくれるような、そんな感覚に近いんですよ。
そんなこと言われてないのに、一歩前に進みたくなるみたいな感覚。
ー前に進みたくなる曲も?
さっきの共作の曲の「ANSWER」とかそう。
ゲームの曲なので世界観はそのゲームに寄っているんですけど、タイトルは日本語で答えって意味で。
歌詞にも
思い出して 思い出して
それが一体全体なんだってことですらもう
わかんないや わかんなくなってさ
気付きたくないよ
重なっていく毎日に
傷ついてでもぶつかってでも
譲れないものがあるから
正解を探して
「ANSWER」/フレデリック×須田景凪
とか
間違いを正して
「ANSWER」/フレデリック×須田景凪
とかあるんですよ。
間違えたっていいし、ミスをしても正解にたどり着けばいいじゃんみたいなことをしれっと言ってくれるところがいいなって思います。
ーいい…!
mooleeさんもきっとこれだけは譲れないみたいなのってあると思うんですけど、まさにその通りだなって思うんですよね。
ーわかる!あとは、なんとなく人生つらいかもみたいな人が聴いたら、すごい刺さりそうな歌詞ですね!
声質もハイトーンすぎず、低い声すぎず、深めなのに裏声になるところとか、とても綺麗なんですよ。
ー確かに曲を邪魔しないみたいな、聴いている時の自分の感情を邪魔されない印象がありますね。
あと、須田さんのライブってバルーン時代の「シャルル」とかのボカロの楽曲も歌うんですよ。
自分で作ってるからって自分でも歌えるのはすごいなと思うんですよね。あの高さを。
ーボカロの声の高さに合わせて作られたものとかもありますもんね。すごい。セルフカバーではなんの歌が好きですか?
やっぱり「シャルル」ですかね。
ーやっぱり(笑)シャルルの良さ教えてください!
とにかく癖になるんですよね。
聴きやすくするためだと思うんですけど、普通の曲ってアップダウンあんまり激しくないじゃないですか。
ボカロって機械に歌わせているので、キーの幅に限界がなくて抑揚がすごいんです。繰り返しの部分も多くて、癖になるんですね。
ーそういう曲って頭に残りますもんね。
ボカロの楽曲って中毒性があって癖になる曲が多いんですよね。気づいたら聴いていたくなるような感じ。
「脳漿炸裂ガール」とか「千本桜」も癖強いと思いますね。
ー元々『初音ミク -Project DIVA-』のゲームやってた勢としては共感の嵐だ…。
ーこういう感情の人に聴いてほしいとか、このアーティストさんが好きならば、好きだと思うから聴いてみてほしいとか、そういうのってありますかね?
まず、見た目とか境遇が少し似てるのもあって米津玄師さんと比較されることが多いんですよね。
ただ、どちらかというとVaundyとかのシティポップ寄りが好きな人にとっては聴きやすいかもしれないです。
ーなるほど〜!私は秋山黄色さんを聴いていた流れで「veil」を聴いていいなと思ったんですよね。フレデリックともコラボしているので、ギターロックあたりが好きな人も良さそうですかね?
そうですね、タイアップで須田さんのことを知っている人も多いので。
でも顔出しなど特にしていないので、まだまだ知らない人も多いかもしれない。
ーYouTubeのアイコン顔出ししてません?
今でこそアーティスト写真などで出しているんですけど、もともとあまり顔出さない人なんですよね。
PVも「ANSWER」は顔でてるけど、基本出してないですね。
ーあ!実はMVのグラフィックについても聞きたかったんです!すごいアーティスティックですよね?
基本的にイラストレーターのアボガド6さんという方が手掛けています。
アボガド6さんのイラストも世界観を助長していて、そこもまた魅力の一つではあるかなって思います。
ーでは、是非MVと一緒にきいてほしいですね。
そうですね、是非。
ーそして、最近になると須田さんの顔が見え始めているようなMVが多いですね。
実写も結構ありますね。
「パレイドリア」ぐらいまでは顔出ししてないんですけど、「MOIL」「はるどなり」くらいからはみえてきて、「ANSWER」はがっつり顔出ています。
ー時系列も追って観ていただくと、変化も楽しめますね。
そうですね。
ーありがとうございます。ちなみに、Maakyさんは須田景凪さんの曲をどんな時に聴きたくなりますか?
仕事でもう1ランク上のことを求められて指導をもらって落ち込むことがあるんです。そういう気分が落ちている帰り道とかに聴くことが多いですね。
ーそのストーリーが音楽配信サービスのCMになりそう(笑)日常のちょっと疲れたなってときにいいですね。
めっちゃ元気な時に聴くというよりは、そういうときのほうがいいのかもしれないですね。
まぁ、音楽なんていつ聴いてもいいんですけどね(笑)
ー間違いないです(笑)
おすすめ曲は「veil」と「シャルル」
ー須田景凪さん、バルーンさん、それぞれ一番初めに聴いてほしい曲をお伺いしてもいいですか?
須田景凪さんだと「veil」ですかね。
落ちたところから立ち上がれるような曲という意味でいいですし、声も曲も寄り添ってくれてる感じが凝縮されているのかなって思います。
バルーンだとやっぱり「シャルル」を聴いてほしいですね。
ー愚問でしたね(笑)
あえて、もう一つ上げるとしたら「メーベル」ですかね。
この曲も「シャルル」と同じアルバム『Corridor』に入ってて、セルフカバーもあって、すこしシャルルには近いけどまた違った良さがあります。
「シャルル」はさすがに高すぎるのでキーを変えて歌ってるんですけど「メーベル」は原曲キーで歌われてます。(笑)
ーそれぞれのセルフカバーの差とかも楽しめそうですね!ちなみに、音楽の魅力の一つで生の音を聴くことかなって思っていて、ライブについてはどんな感じですか?
バンドのライブに行ってると、新しい曲がどんどん増えていって昔の曲をやらなくなったりすると思うんですけど、須田さんのライブって新しい曲はもちろん昔の楽曲もやってくれるんですよ。
ーそれは昔から好きな人からしたら嬉しいですね!
須田さん本人の楽曲だけではなく、バルーンの楽曲も歌ってくれるのも魅力ですね。
ー最高だ!ちなみに、パフォーマンスはどうですか?
モッシュが起こったり、手を突き上げたりとかではなく、静かに聴かせるタイプですかね。
しんみりまではいかないんですけど、大人しく聴いていたいっていう感情になる。
ー私結構大人しく聴いていたい時って、アーティストさんが作り上げる世界観がすごくってそれをずっとみていたいなって思うんですよね。Maakyさんとして、大人しく聴いていたい理由って何ですか?
まず元々MVで顔出ししていなかったっていうのもあるんですけど、実物だ、本物だみたいな、そこに存在を感じれるというか。そんな感じなんです。
実際、音源と生歌との差があって、個人的には許せるアーティストと許せないアーティストはいるんですけど(笑)
須田さんはライブと音源が違くても、変なアレンジもないのに、なんか雰囲気違うけど自然と入ってくる感じなんですよ。
ー体感するためにもライブに行ってみてほしいですね。
ー沢山お話お伺いしたのですが、他にお話されたいことはありますか?
そうですね。須田さんって猫飼ってるんですよ。
Twetterとかにもよくあげてるんですけど、ふとんって名前で。
ファンの人はふとんの話をよく知っていて、よく「ふとんは元気ですか?」とかのリプを見かけますね。
家族が増えましたのツイートから始まってます。
ーこの時は名前がなかったんですね!
完全に夏目漱石みたいですよね。
吾輩は猫であるみたいな(笑)
ー確かに(笑)そしてそのあとふとんになったんですね。
そうなんです。
獣に名前がふとんに決定って書いてた(笑)
ー動画のふとん可愛い〜!面白い!!
須田さんって冗談とか言わなさそうなのに結構面白いんですよ。
ー(須田景凪さんのTwitterを見ながら)アボガド6さんじゃないですか。
これは一番新しい曲(2021年12月時点)「パメラ」の絵ですね。
ー人柄としても奥深い方なんですね。スルメイカじゃないですけど噛めば噛むほど味がでるみたいな(笑)
間違いないです(笑)ふとんのことは言っておこうと思ってたので話せてよかったです。
ーありがとうございます!
須田景凪さんを漢字一文字で表すと「味」
ーそれでは最後になりますが、須田景凪さんを漢字一文字で表すとどんな感じになりますか?
「味」ですかね。
さっきおっしゃった噛めば噛むほどもそうですし。
これ個人的な意見なんですけど、ボカロの曲を人間がカバーすると原曲に近づけてうまく歌えるかが評価の対象じゃないですか。
須田さん自身がバルーンの歌を歌うと、同じ曲なのに違う感情というか解釈というか、そういうのが顔をのぞかせる感覚があるんです。
人が歌う前提があった曲にしても、いろいろな味がでてきて、虜になってきて、だんだん他の曲も聴きたくなっていく「味が無くならないガム」なんですよ。
ー面白い例えで、わかりやすい!ありがとうございました!!!
こちらこそありがとうございました!