アーティストの良さをそれぞれの角度から語ってもらう企画「某アーティストのマニアに聞きました。」 #ボーマニ。
今回は「ナードマグネット」について、東京を中心にDJ活動をしているかっさん(BreakYourEveryday、HOWLING)にお話をお伺いしました。
ー今回はナードマグネットについて語っていただきます。かっさん(BreakYourEveryday、HOWLING)にお越しいただきました。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーまずは、ご自身の簡単な自己紹介をお願いしてもよろしいですか?
はい。
明大前で「BreakYourEveryday」(以下略:BYE)というロック中心のオールジャンルイベント、下北沢でHOWLINGというLIVE&DJイベントをやっています。
今は無き浅草ゴールデンタイガーという場所で浅草龍虎晩というイベントのレギュラーDJをしていました。
ーどちらも愛に溢れているイベントでして、私もお世話になっております。みなさんぜひチェックしてみてください。
聴きやすい歌詞のバンド、ナードマグネット
ーまずは、ナードマグネットとはどんなバンドですか?
ナードマグネットは大阪の4人組パワーポップバンドです。
ーパワーポップバンドとはまた定義が難しいですね。
わかります!ロックのサブジャンルの定義は難しいですが、パワーポップという音楽をやっている方たちです。
メンバーは全員会社員なのでライブは土日が多いです。
だから、働いてる身としてはとてもありがたいですね。
インディーズでやっているのですが、活動開始は2006年からなので長く活動しています。
ー長いですね!約16年くらい活動している!
初期のほうの音源はいまの方向性とは違うことをやっていました。
今はパワーポップ、ポップパンクのような感じです。
ーパワーポップを象徴するような曲ってどの曲がイメージつきますか?
僕の中では、「C.S.L」か「Mixtape」ですかね。
メロディーラインがポップで且つ、BPMはそんなに早い感じではないと思います。
ーグサッてくるものがあってそれがパワーと捉えているのですかね?Wikipediaには“ポップなメロディと、はじけるようなサウンドが特徴となっている”と書いてありますね。
そうなんです。
コード進行は明るい。
でも歌詞はどちらかというと後ろ向きなものが多いかもしれないですね。
ーなるほど。そもそも、2006年に結成された当初はパワーポップっぽくなかったんですか?
今の路線に入る前の音源って絶版になっていて入手がとても難しいんです。
サブスクに出ているものもすべて今の路線になってからの音源なんです。
いまのナードマグネットをイメージして聴くと、全然違う音楽に聴こえますね。
ーそうなんですね。ナードマグネットを知ったきっかけはなんですか?
龍虎晩で、友人が「ぼくたちの失敗」という曲をかけてて、それがきっかけでナードマグネットを聴こうと思いました。
そして、このバンド好きだなぁと自覚した曲が、「アフタースクール」ですね。
この曲は元カノが結婚するみたいな切ない歌詞なんですけど、
またノーベンバー
もう3回目の冬がすぐそこまで
あぁ 何か変わっただろうか
「アフタースクール」/ナードマグネット
って歌詞がありまして、忘れられない人との別れから3回目の11月頃にたまたま聴いていました。
色々自分の気持ちと重なってしまい、そこから好きになっていったのがきっかけですかね。
一時期、ナードマグネットを流すために、流れをどう作るかみたいなことを考えてDJしていたこともありました。
ーそうなんですね!ちなみに、どういう流れでナードマグネットまで持っていくんですか?
普段自分のDJで聴いて欲しい曲がある場合は、その曲を歌っているバンドと繋がりのあるバンド、もしくは音楽ジャンルが近しい有名な曲を前にもってきて筋道を立てて、自分が納得するかたちでかけています。
例えばナードマグネットを掛ける前後にはハンブレッダーズやSEVENTEEN AGAiN、SonoSheetやCalendarsなどの曲を掛ける事が多いかなぁ。
文字情報にしてみても、対バン相手だったり曲のオマージュ元だったり、関係性がイメージできるような並びでなるべく曲を選ぶようにしています。
ーこないだも、SEVENTEEN AGAiNライブの転換DJでもナードマグネットかけてましたね。
SEVENTEEN AGAiNの『世界は君たちを変えることはできない』というアルバムのツアーがありまして、そこで転換DJをさせて頂きました。
初めてSEVENTEEN AGAiNを見たのが、SEVENTEEN自身が主催している「リプレイスメンツ」というイベントでした。
「リプレイスメンツ」にナードが出演していたのがきっかけで観る機会があって。
その後、大学の友人がやっている勃発というバンドからのお誘いもあり、転換DJでご一緒させていただきました。
せっかくSEVENTEEN AGAiNと同じイベントに出演して、かつSEVENTEENの前に転換DJを担当するのなら、どうしてもナードの曲を掛けたいと思いました。
ではナードマグネットのどの曲をかける?ってなった時に「THE GREAT ESCAPE」という曲をかけました。
ーなんでその曲をかけたのですか?
歌詞ですね。
待ち望んでいたのはこんな世界じゃない
「THE GREAT ESCAPE」/ナードマグネット
という歌詞があるんです。
僕の解釈なのですが、この曲には今のコロナ禍に通ずる部分を感じています。
ーなるほど、どういうところですか?
この曲のMVの設定は、ゾンビ化するウイルスが流行する世界で、感染病が蔓延るって今のコロナ禍みたいだなと思うんです。コロナ禍より前のMVなんですけど。
ゾンビが人間を襲うのって、まるで意見の合わない人を攻撃しているように感じられるなと。
例えば、一時期ライブハウスが叩かれたりしたじゃないですか。その時の様相にも似ているなと。
今の世の中って誰も待ち望んでいた訳ではないですよね。音楽好きの中でも色んな賛否があったように感じています。
それでも、決められたルールの中でライブハウスで楽しむ事を諦めなかった人たちがたくさんいます。
そんな状況を見て、『世界は君たちを変えることはできない』というSEVENTEEN AGAiNのアルバムの名前と「THE GREAT ESCAPE」という曲が僕の中でリンクした感覚がありました。
だから、「THE GREAT ESCAPE」をかけた後にSEVENTEEN AGAiNのライブを観たいと思い、セレクトしました。
ーそうなんですね。こう聞いてると先程言っていたように暗めな曲が多そうですね。
別れとか後悔について書いてる歌詞が多いなって感じます。
それを書くに至る色々があったんではないでしょうかね。
ーバンドマンってたくさん色んな経験してそうですもんね!
ナードマグネットの歌詞って大体が自分だけではどうにもならない気持ちを表していることが多いな、と思います。
誰かとの別れを引きずってるような歌詞だったり、後悔だったり。
ーそうなんですね!まず、別れや後悔とかを感じさせる歌詞が印象的な曲ってなんですか?
後悔といったら「ぼくたちの失敗」ですね。
代表曲ですからね。
想像していた以上に事態はとても酷い
次の言葉を探すけど wow-wow-wow
これはもう何万回も思い描いたし
喉が渇いて死にそうです wow-wow-wow-wow
そして手と手は触れ合って
頭の中こんがらがって
僕ら何かを間違った
僕らどこかで間違った
どこから間違った
こんなはずじゃなかった
こんなはずじゃなかった
こんなはずじゃなかった
こんなはずじゃなかったのにな
「ぼくたちの失敗」/ナードマグネット
そして、全国流通盤の1発目の曲です。
ーどうしてこれを1曲目にしたんでしょうね?
1曲目としてのパンチがすごいですよね。
こんな高いテンションで「こんなはずじゃなかった」ってどういうこと!?みたいな。
でも大きい後悔をした時に頭の中がぐるぐるして、デカい声でこういう事言いたくなる気持ちもすごい分かる。
ー間違いないです。どのアルバムでしたっけ?
『CRAZY,STUPID,LOVE』の1曲目です。
ーこれはアー写も印象的ですよね。でもいまは怒ってる曲が多いということですが、なんていう曲ですか?
「バッド・レピュテイション」とか「爆発しそう」とかですかね。
ーそしたら「バッド・レピュテイション」からお聞きしてよろしいですか?
陰口とかしょうもない噂話なんてどうでもいい!同調圧力クソくらえ!みたいな曲です。
MVがGreen Dayの「Basket Case」みたいだし、曲の後半はBlink182の「First Date」の引用あるのも面白い曲です。
ーなるほど、もうひとつの「爆発しそう」はどうですか?
まだ、コロナって結局何なのか分からないし、何が正しいのかも分からない、世の中が一番混乱している時期に生まれた曲です。
言ってる事は多分正しいけど、どこか納得できないような事がこの頃たくさんあったと思います。
その頃の気持ちがすごい歌詞に出てますよね。
ナード自身、ちょうどコロナがヤバいぞって頃に東名阪ツアーの予定があって、中止にせざるを得なくなったりかなり辛い時期だったみたいです。
こんな顔しかできないんです
あなたの指摘は正しいです
I don't careだなんて
言えたら楽になれんのかな
今日も俯いて帰るだけ
「爆発しそう」/ナードマグネット
ーなんだか当時を思い出しますね。
社会人バンドなので、会社から行動を制限されたり、やりたいことも出来ないから、まさに「爆発しそう」でしたよね。
うちらも毎週のようにライブやDJイベントで遊んでいたのがなくなっちゃったので。
実はオマージュ曲が多い!
ーなるほどですね。歌詞以外のナードマグネットの魅力ってなんですかね?
ナードマグネットの曲っていうのはオマージュが多いです。
例えば、『この恋は呪い』というミニアルバムに収録されてる「いとしのエレノア」という曲。
WHY ARE YOU SO FAR AWAY FROM ME?
「いとしのエレノア」/ナードマグネット
という歌詞が、Weezerの「Across The Sea」という曲の歌詞の引用なんです。
当時、エレン・ペイジという女優がいて、この人の事が本当に大好きだったみたいです。彼女に向けてのラブソングですね。
ーありました!この記事ですね!
「自分はこの先の人生でどう頑張ってもこの人と出会うことは無いんだろうな…」と思い至って何ともたまらない気持ちで部屋を転げ回り(狂人)、もうこの感じをそのまま曲に!と歌詞を書き始めました。
心に茨を持つ社畜 THE SHACHIKU WITH THE THORN IN HIS SIDE /「ナードマグネット」というバンドのボーカル・すだの日記です。
ー恋愛ソングって元恋人や好きな人に向けて書くことが多いと思いますが、それ以外の感情も歌にできるんですね!
「バッド・レピュテイション」とか「爆発しそう」はムカつく奴らに書いてたりするんでね。
ー確かに。それ以外だとどんなオマージュがありますか?
Black Kidsの「I'm Not Gonna Teach Your Boyfriend How To Dance With You」をカバーしているんですが、イントロがNirvanaの「Smells Like Teen Spirit」だったのは面白かったです。
同じ「透明になったあなたへ」で言うと、「COMET」はJimmy Eat Worldの「Sweetness」そっくりですよね。
余談ですが、こないだ友達が「Sweetness」ってELLEGARDENの「Salamander」も似てるよねって言ってて「確かに!」って思いました。
分かりやすいところでいったらこういうところかなって思います。
ー邦楽ロックが好きな人にはもちろん、洋楽が好きな人にも楽しんで聴いてもらえそうですね。
ナードマグネットは洋楽の影響をダイレクトに受けているので楽しめると思います。
あと邦楽のオマージュもあります。
「僕は知らない」という曲がTHE BLUE HEARTSの「青空」の歌詞のオマージュがになっています。
邦楽のオマージュってあんまりないと思うんですよね。
生まれたところや皮膚や目の色は選べなかったけど
いま君にかける言葉ぐらいはちゃんと選びたいな
「僕は知らない」/ナードマグネット
と
生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何がわかるというのだろう
「青空」/THE BLUE HEARTS
引用しているのが「生まれたところや皮膚や目の色」の部分ですが、当然それだけでは相手の事は何も分からないですよね。目に映る事実だけでは「君のことは僕は知らない」という事になるんだと思います。
引用元の青空の歌詞が「いったいこの僕の何がわかるというのだろう」に対して、「いま君にかける言葉ぐらいはちゃんと選びたいな」という歌詞は、何も知らないけど、君に寄り添ってあげたいって気持ちが伝わる優しい歌ですよね。
オマージュがあるから、今まで聴いてこなかった音楽に改めて出会えたり、それまでとは違う聴き方ができる。
音楽のひとつの楽しみ方ですよね。
ーどんどん他のアーティストへ広がっていくってすごく面白いですよね。
あと、「Mixtape」の
We are infinite!
「Mixtape」/ナードマグネット
このシンガロングパートの歌詞は「ウォールフラワー」という映画のセリフです。この映画にもミックステープを渡す場面が出てきます。
音楽を通じて良い映画にも出会えました。
ーそうなんですね!他にありますか?
『透明になったあなたへ』というアルバムの最後にある「HANNAH / You Are My Sunshine」という曲もNetflixの「13の理由」というドラマの登場人物の歌です。
ー世界が広がりますね!他にナードマグネットの魅力はありますか?
メロディが本当に良くて、それに乗る歌詞も流行語とかはなく、普遍的な言葉で書いてあるから、いつ聴いてもいいなって感じられる音楽だと思います。
ー私もそう思います。歌詞は聴きこめば奥深い内容がわかるけど、やはり最初は「このメロディーかっこいいな。」とか思って聴き始めたりすることが多いと思うんですよね。
そういう意味でも、長く愛される音楽を作っていますね。
よっぽど方向性が変わらない限りはこれから歳をとってもずっと聴き続けるんだろうなって思ってます。
ーそんな素敵なナードマグネットですが、ライブはどういう感じですか?
ライブは最初に須田さん(Vo.須田亮太さん)の小話みたいなところから始まって、最近あったこととかを話して、そこからいきなり勢いつけて曲に入ったりします。
でも、ナードマグネットの曲ってみんなで歌える曲が多いから、やっぱりライブ映えはしますね。
ーライブでの印象的なことってありましたか?
思い出に残っているのは2019年の夏に大阪城野外音楽堂で主催のフェス「ULTRA SOULMATE 2019」ですね。
ラスト終盤、残り一曲前に「THE GREAT ESCAPE」という曲をやっていて、感動でめちゃくちゃ泣いちゃって。
ナードのレーベル(Thistime Records)の社長とその他数名に通りすがりに頭をわしゃわしゃされました。「涙が出る気持ちわかるよ」みたいなのがなんか伝わってきて嬉しかったです。
社長自身がナードのライブでめちゃくちゃ楽しそうにしているのをよくお見かけするので、所属バンドへの愛が深い人だなって思います。
ーそうなんですね、同じレーベルにはどんなバンドがいますか?
Lucie,TooやSonoSheet、CALENDARS、TOTOS。
あと最近新しく加わったズカイというバンドがいます。
ーSonoSheetとか、かっさんめちゃくちゃ推してますよね!
SonoSheet好きです!
それこそ知ったきっかけがナードマグネットなんですよね。
なので、自分の聴く音楽の幅を広げてくれたバンドだったり。
メロディーがいいから、DJをしていくうえでその良さを伝える選曲をしたりするようになったのもナードマグネットのおかげなんですよ。
最新アルバム『アイム・スティル・ヒア』は順番に聴くべし!
ー今回新しいアルバムも出たんですよね!(2022/07収録)
そうなんですよ!本当に良くて、このインタビューも再録をお願いしたくらい。
今回のアルバム『アイム・スティル・ヒア』のいいところは、須田さん本人も「コロナ禍のここ3年間の辛い出来事を歌詞にした」って言っていて。
今回のアルバムは配信で元々出していた曲が多いんですけど、アルバムで曲順通りに流れで聴くと印象がまるで違う。
ー流れで聴くの大事ですよね!
「YOUR NEW FAVORITE BAND」から始まるアルバムです。
音は明るい勢いがある感じです。
新しい音楽との出会いで好きなバンドって変わってしまう事が正直あると思うんですけど、そんなリスナーに対して寂しさを感じている。そんな感じの歌詞なんじゃないかなと思いました。
1曲目から寂しい、悲しい歌詞ですね。
その後の曲も暗いです!
例えば「全部だいなし!」の
もうわかり合えないとわかり合えてる
気付いたことに気付かれないように
なんで君も泣いているんだろう
「全部だいなし!」/ナードマグネット
とか結構絶望的だし。
ー別れるしかないもんな…。
「ALTER EGO」って曲も端的に言うと、めちゃくちゃ飲み過ぎた次の日の二日酔いの日ってあるじゃないですか?
ーあるある!!
飲みすぎて「あぁ、あの時あんな事言わなきゃよかった…」とか後悔して、その時の俺は俺じゃない!って思いたい時ってあるじゃないですか。
その時ってマジでこの歌詞にあるようなネガティブが押し寄せてくるんで、個人的には「めちゃくちゃわかる!」って歌詞です。
あいつは俺じゃない
そこに俺はいない
「ALTER EGO」/ナードマグネット
って言っていて。
ー確かに昨日の自分は自分だと認めたくない時はあるかな(笑)
あと「キャロライン」って曲が以前は未発表だった曲なんですけど、本当に悲しい曲なんですよね。
ーどんな悲しさが表れてますか?
年月だけが積み重なって
気付いていないふりをしただけ
寂しさを静かに飲み干して
夜はまたボンヤリ落ちてくる
「キャロライン」/ナードマグネット
この歌詞は、元々そばにあった人々や可能性がどこかへ行ってしまって、寂しさを感じているような言葉に思いました。
それでも、曲の終盤に向けてちゃんと前を向こうとしていくのがいいんですよね。ネガティブから生まれるポジティブは強い。
思い出になんて縋らないで
そこからじゃ何も見えないだろ
遠い未来であの子は笑う
「物語はハッピーエンドだよ」
「うまくいくよ、きっと」
「キャロライン」/ナードマグネット
って。
ーいい方向に向かっていそうな歌詞!
そうなんですよ!
この曲は泣けちゃう曲。ナードマグネットの中で大好きな曲TOP3が更新されちゃうくらい。
感情剥き出しでDJの選曲をしたい時、フルがけでがっつりかけたい。
前に「バンド愛天下一武闘会」という1DJ1バンドの曲縛りのイベントでナードマグネットを担当した当時、まだ「キャロライン」の音源は入手方法が限られていて。
サブスクにもなかったから会場にいる人はまず知らない曲だったんですけど、大好きな曲だから掛けずにはいられなかったです。
ザラついた質感のギターの音の上に、寂しさや悲しさをはらんだ歌詞が乗るのが本当に好きです。
ーエモいですね。私も感情に訴えかけてくる系大好きです。
エモいんですよ、本当に。
「ファニーストーリー」の歌詞も
この夜は誰のもの?
「ファニーストーリー」/ナードマグネット
って「Mixtape」の歌詞にもある
この夜は僕らのもの
「Mixtape」/ナードマグネット
をセルフオマージュしていて、「Mixtape」で描かれる夜とはまた違う夜の話なんですよね。
ただ、この曲も絶望的な状況(≒何度目かの世界の終わりのような)を乗り越えて、過去の笑い話さ、と締める。
この曲もネガティブをポジティブに昇華していると思います。
ようやく気持ちが前を向き始めたところで、1曲目を思い返す「my(old)favorite band」です。
「YOUR NEW FAVORITE BAND」のリプライズで、アコースティックの「my (old) favorite band」。
ーおおお!1曲目のYOUR NEWと途中の9曲目に来るmy old。
「YOUR NEW FAVORITE BAND」で疎遠になってしまった、好きだった音楽。でもその音楽はきっと唯一無二のもので、どこにもいかないからいつでも帰っておいで。
そんな歌詞が須田さんの弾き語りで優しく歌われます。
昔聴いてた音楽を今聴き直したら、当時の気持ちを呼び起こしたり、逆に新鮮な気持ちで聴けるかも知れないですね。
で、次の「DETENTION」。ようやくここから立ち上がってくる感じがある。
コロナ禍で亡くなってしまった好きなバンドマンに向けての曲みたいです。
「DETENTION」って「居残り」って意味で、彼らは逝ってしまったけど、自分は「この世に居残りをしている」からまだ生きていこう、って歌詞なんだと思います。
そして、アルバムの最後は「アナザーラウンド」。
ー最後は最高の人生にしようって歌詞になってますね。
それまで、コロナ禍だし、ベースのともにゃん(前川知子)辞めちゃうしで、本当にバンド辞めようかなと思うところまで思い立ったらしくて。
そんな心情の流れが全て反映されているアルバムかもしれない。
ーそうなんだ!「全部だいなし!」とか、今の話を聴いて尚更しっくり来るものがありました。
アルバム通したら30分くらいなんですけど、絶望から前を向いていくような。
ちょっとしたショートムービーを観ていると思っています。
ー是非これは流れで聴いてほしいですね。他のアルバムも流れで聴いてほしいのはもちろんだけど。
特にね。
「いとしのエレノア(10 years later)」も再録なんですよ。
ー10年後の話ってことですかね?
前半で話した、エレン・ペイジがこの10年の間でトランスジェンダーであるのをカミングアウトして、エリオット・ペイジとして改名したんです。
ーなんと!そしたら歌詞も変わってますか?
そうなんですよ。
You were so lonely girl
「いとしのエレノア(10 years later)」/ナードマグネット
って女性であった事が過去形になっている一方で
メガネを外して見えた景色は
なんか意外と変わんないな
「いとしのエレノア(10 years later)」/ナードマグネット
と、「エレノア」はこの10年で大きく変わったけど、自分はそんなに変わらないな、って感じている言葉もあったり。
でも、「You are so beautiful」と歌っているように、何があっても美しい人間であるのは変わらないね、って気持ちが伝わってきて、ラブソングであるのに変わりはないですね。
ナードマグネットおすすめソング
ー色んな曲をおすすめしてもらいましたが、今ナードマグネットを気になっている人にお勧めしたい曲、これは聴いてほしいっていう曲を何曲か出してもらってもいいですか?
これがナードマグネット!って思う曲が、「ぼくたちの失敗」ですかね。
これをきいて共感できない人とは、僕は友達になれないです(笑)
歌詞とか以前の問題で、聴いたらかっこいい!と思うと思います。
あとは、「THE GREAT ESCAPE」ですかね。
歌詞で好きな部分があるんです。
何もない君はこんなにも素敵だよ
「THE GREAT ESCAPE」/ナードマグネット
自分の気持ちを押し殺すような状況から、逃げ出してもいいんだよ。それで何も無くなったとしても素敵だよ。
と自分を肯定してくれる感じが好きなんです。
ー人生色々大変だけど、頑張っていきたいなってときに聴きたいですね。
あと、最後に「Mixtape」です。
ライブハウスが好きな人には全員聴いてほしいです。
ライブのクライマックスにもやる曲だし、音楽が好きだったらみんなに刺さる曲だと思います。
ーありがとうございます!
ナードマグネットを漢字一文字で表すと「心」
ーそれでは最後に恒例の、ナードマグネットを漢字1文字で現わすとしたらなんですか?
「心」です。
ナードマグネットの歌詞と自分の心境は合致しているなって感じる事が多いです。
ー確かにすごい歌詞に共感してましたもんね。
歌詞の解釈とか全体の意味とかは考えないけど、「こういう気持ち、確かに思うな。」とかの共感はします。
自分だけでどうにもならないことが多いので。
ーそれをナードマグネットが歌詞にしてくれているんですね。
僕が、ナードマグネットをみんなに広めたくてDJでかけ続けている理由は、バンドが売れてほしいと願うのもそうですが、この曲を聴いて共感してくれる人がいたら、その人と仲良くなれると思っているんです。
自分の心の弱いところを助けてもらってるんです。
ーいい…!最後にこの記事を読んでくれている人になにか一言ありますか?
この記事にあるリンクに貼ってる曲は全部聴いてください!
なにかのきっかけになれると嬉しいです。
ーぜひ皆さんの人生のお供にしてほしいですね。今回はたくさんのお話ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました!