「bacho」は地元愛を胸に、人の魂を震わせるライブと歌詞で魅了するバンド

アーティストの良さをそれぞれの角度から語ってもらう企画「某アーティストのマニアに聞きました。」 #ボーマニ。

今回は「bacho」について、本業の傍らでDJも務めているnasunakaさんにお話を伺いしました。

-今回は「bacho」について語っていただきます。まずは簡単に自己紹介をお願いします!

たまに渋谷や下北沢でライブハウスでDJをやったり、ライブハウスへ遊びに行ってそこでお酒を飲んだり…。

ただの音楽好きですね(笑)。

-私もよくその辺のライブハウスでお酒をご一緒することもありますが(笑)。

ー今回はbachoを語っていただきますが、簡単にバンドの紹介をお願いします。

bachoは兵庫県の姫路出身のメンバーが2002年に結成して、今もなお姫路を拠点に全国で活動し続けているバンドです。

地元で活動していることがバンドの一つの軸になっています。

-もう20年経っていますね!

そうですね。メンバーは初期から少し変わってきていますが、今は4人。

ジャンルとしてはエモやオルタナティブ、ハードコアなどの部類になるかと思います。

対バンしているバンドもそういうジャンルが多いです。

-具体的に名前を挙げると?

一番縁が深いのは、LOSTAGEですかね。

奈良の象徴的バンドですが、一緒にスプリットを出すなどしています。

-LOSTAGEはまだ活動していましたっけ?

していますよ!僕もそんなに聴けているわけではないですが、この前4月に立川でフェスがあって(CRAFTROCK FESTIVAL '22)、その時bachoも出ていて、トリがLOSTAGEでした。

2日間の内、その日はAge Factoryも出ているなど完全にエモな匂いがするラインナップでしたね。

bachoの最大の魅力 - 互いにぶつかり合う"ライブ"-

-いいですね!では、初めにbachoの魅力について教えてください!

一番はライブです!

何が良いかと言うと、お客さんもシンガロングしてそれにbachoが応えるように演奏する点。

僕も初めはその動画を見て、ライブに行きたいなと思って行き初めたんです。

-bachoはYoutubeにライブ映像が多くアップされていますよね。

早速一つ紹介したいのが、2017年のTAMASONICでのライブ映像です。

毎年TAMASONICには呼ばれていますが、この映像が良いのは正面じゃなくてバックから撮られていること。

そして、モノクロなところもよりエモさを感じられますし、お客さんの楽しそうな表情がたまらないんですよね。

-お客さんがぐちゃぐちゃになりながらもbachoを真正面から受け止めているところも良いですね!現場好きな人にはたまらないでしょう!

皆、ライブの仕方がうまいというか。

この後、「ビコーズ」という曲が始まるんですが、イントロでお客さんも反応して…。

この時はまだbachoのライブに行っていなかったので、自分もこの場にいたかったなと思います(笑)。

-そうなんですか!

bachoのライブに行き始めたのは2019年なんです。

-割と直近なんですね!

はい。バンドは前から知っていてアルバムも買ってはいましたが、そこまでハマりきっていなくて。

映像を見るとわかる通り、最前の人たちがステージに足をかけて自主的にセキュリティの役目を果たしているという(笑)。

-頭から降ってこようが関係なしですからね!

激しいんですが、絶対ケガを出さない様にしているところが良いんですよね。

周りや演者に迷惑をかけずにやっていますし、皆さん大人だなと。

それが表情を見ると伝わってきますよね。

-なるほど!しかし、ビコーズはメロディラインも良いですね!

哀愁を感じるというか…。ビコーズに関しては、かなり上位の曲だと思います!

歌詞も好きで、

いつだってギリギリさ

ずっとそうだろう

そんな夜と夜を俺たちは繋いできた

「ビコーズ」/bacho

最後の

自分の終わりは自分で決めるさ

「ビコーズ」/bacho

これもグっと来ますね。

例えば、遊んでいる時でさえも終わりは自分で決めないといけない、終電で帰るのかとか(笑)。

この間は結局決められず、朝まで飲んでしまいました(笑)。

それは冗談として、bachoに恥じないようにしないといけないと思います。

-あはは(笑)。bachoのライブってやっぱりいいですね!

こういう皆で一つになって盛り上がれるものなんですが、コロナ禍でこういった楽しみ方が一切できなくなりました。

飛沫は飛びまくるし、密ですから、本当に残念でもどかしい。

今年4月のフェスでは特にシンガロング自体の禁止は定められていなかったんですが、皆マスクして歌っている感じでした。

-前のような光景が戻ってきてほしいです。

ただ、希望だなと思ったのはbachoが出ていた関西のONE & ONLY FESTIVALで、皆さん自ら選んだ上でダイブなどをしていました。

まだそれぞれの状況を見ながらという話ではあるので、依然として難しい話ではありますけれども。

-この記事を読んでもらってbachoを好きになってもらい、未来のことを想像してもらえたら楽しんでもらえるかなと思います。

KOTORIというbachoをリスペクトしているバンドが、自ら主催しているTORI ROCK FESTIVALやツアーで先輩のインディーズバンドを招いていて、bachoも呼ばれています。

そのTORI ROCK FESTIVALが2019年に下北沢であって、ちょうど観に行っていたんですが、ちょうどシンガロングをし始めた時だったんです。

終演頃に2人組の男の子が「俺たちもああいうのやりたいわ」と話していて、(君たちもすぐにできるようになるよ)なんて心の中で思ってました。

bachoとの出会い

-nasunakaさんのbachoとの出会いについて教えてください!

2015年2月に「最高新記録」というアルバムが発売されたんですが、それを購入したのがきっかけです。

初めてライブに参加したのが2019年ですから4年くらいのブランクがありましたが、ライブ仲間に「bachoいいよ」とオススメしてもらって。

そのアルバムの中に「高砂」という曲があります。

高砂というのはbachoの地元・兵庫の街の名前で、曲としてはさほどアップテンポではないんですが、結構哀愁を感じる曲。

他の収録曲は当時そこまでハマっていなかったんですが、この曲はすごく好きだったんです。

-なるほど!

当時は新宿のMotionや下北沢ERAなどのライブハウスに通っていました。

bachoも、その箱で出会った友人に教えてもらったので、被る部分はあったんでしょうね。

-そこからどうハマっていったのでしょうか?

どうしてかなと思って、過去のtwitterの投稿を振り返ってみると、2015年に「ここのところ仕事中に頭の中でbachoが流れてるな。bachoの決意の歌だ。高砂がグッときたからアルバムを買った」といったものがありました。

-当時のtwitterを見るとエモいですね(笑)。投稿を見ていると快速東京とかもいるじゃないですか!

2012年あたりはすごく好きでしたね。あとはKEYTALKやキュウソネコカミも好きでした!

-私もそのあたりはよく見に行ってました!そこからなぜbachoに?

そこからSLEEPLESSというバンドを見る機会があって、そのバンドメンバー4人中2人がライブ中にbachoのTシャツを着ていたので、そこでも気になったんです。

-バンドマンが他のバンドのシャツを着てライブするのはすごく良いですよね!

bachoはそのケースがものすごく多いです。他のバンドマンからのリスペクトがすごいなと感じます!

-そこからどうなっていったのでしょう?

2017年くらいにライブに行きたいと思い始めて、2019年にのCAMPASSという柏で行われるフェスで初めて見ました。

フェスだと初見でいろいろなバンドを見られるので、入口にしやすいですよね!

-それは間違いない!

そのあとも違うフェスなどでbachoを見て、またSLEEPLESSが関係してきますが、吉祥寺で行われた彼らのツアーファイナルにbachoを呼んでツーマンライブをしたんです。

-吉祥寺だと箱もさほど大きくはなさそうなのが良いですね!

bachoもライブするくらいの大きさですね。

その3~4か月前の夏のライブでSLEEPLESSのメンバーの方と話す機会があって、「まだ公表していないんですけど、12月にbachoとライブをします」と聞き、このライブを見るまでは死ねないと思いました(笑)。

-絶対死ねない!(笑)

twitterにそのライブのアツーい動画がありました。

SLEEPLESSのツアーファイナルなので、1番手がbachoで2番手がSLEEPLESSだったんですが、アンコール1曲目でbachoの「決意の歌」をカバーしたんです。

-有名な曲だ!

その最後のサビで北畑欽也さん(Vo&Gt)が出てきて盛り上がったり…。

この動画をあげていた徳太郎君(https://twitter.com/Mr_tokuchan)とは、それまでは繋がりはなかったんですが、昨年くらいにコロナ禍でのライブハウスで出会って、あの時の徳太郎君じゃんみたいな感じになりました(笑)。

徳太郎さんのtwitterアカウント

彼もSigarDownというバンドやっていますがすごくカッコいいですよ!

-紹介を入れておきます!決意の歌、やはり良い曲、歌詞ですね!

誰かの足を引っ張るよりも、

俺も誰かの背中を押したい

「決意の歌」/bacho

自分もそういう気持ちでありたいなと思います。

-現代ってSNS、特にtwitterは誰かの揚げ足をとりがちですけど、そうではなく皆を応援できるような関係性になれば幸せだと思います。

そうですね。

こうして、ライブやbachoを通じて何年越しという形で繋がっていけるのも最高ですね。

今はSLEEPLESSは活動休止中ですけど、またこんなふうに対バンしてくれたら嬉しいです!

bachoの歌詞が持つ魅力

-こういうことを機に、どんどんハマっていったんですかね?

そうですね。そこからすぐに新型コロナウイルスの影響を受けて、ライブハウスが危ない状況になったんですけど、やれる範囲でDJたちが音源を持って集まる中でbacho好きな人たちとも出会いました。

元々bachoが好きだった人もいましたし、僕がbachoをかけていたら好きになってくれた人もいて。

-DJをやる楽しさってそこですよね!

こうして好きな人を増やせればバンドにも貢献できているという気にもなれますから。

さっき流したモノクロの映像を見せると「泣きそうになったわ」と言ってくれた人もいました。

-当時外になかなか出られない状況で、あんなエモいものを見せられたら泣きそうにもなります。

その彼もbachoを見たいと言ってくれて、彼はMOROHAが好きなのですが、先月にちょうどbachoとのツーマンがあったので行こうみたいな話になりまして。

結局都合がつかずに見合わせましたが、コロナの影響もなくなって皆でbachoを見られたら最高だなと思います。

-いいですね!私もbacho見たいですから。ちなみに、DJで流していた時は他にどんな曲を?

テンポの速い「さよなら」という曲や、

テンポとしてはそんなに速くないですが、イントロからパンチがある「最高新記憶」とかです。

-イントロの重厚感がいいですね!

はい。あとは決意の歌もやはり流していました。

ちなみに、KOTORIの「素晴らしい世界」という曲でbachoをオマージュしたリフを使っているんです。

この曲のイントロのパターンはbachoの決意の歌にも使われているんです。

素晴らしい世界のサビ終わりから決意の歌に繋がっているという。

-すごいですね!

あとは「NENASHIGUSA」でしょうね。

これも皆すごくシンガロングするような曲です。

コロナ禍前だとサビ前のポエトリー的なところで

近づくほどに遠ざかる、幻みたいな理想だと嘆いて

得意の下方修正、無理っぽいとか言って

現実はとか言って、誰の為に

「NENASHIGUSA」/bacho

この部分でお客さんをステージに上げて、そのお客さんがサビ後にダイブして戻ってくるという。

いつか上げてもらえたら嬉しいです(笑)。

いつもだと欽也さんが「君来る?」みたいな感じで上げてくれて、そのまま一緒に歌うという流れです。

アップされている動画の中に、5才か6才くらいの子どもをステージに上げて一緒に歌っているものもあって、それがこの世で一番平和でしたね。

-世界平和ですね!

他には付き合っていて結婚を控えた2人が上がって歌っているのもありましたよ!

-素敵ですね!そして、歌詞が良すぎますよ!

bachoって、何かに躓いた人が立ち上がっていくということを歌っているんですよ。

NENASHIGUSAでも、

最近金がなくて、最近忙しくて、

最近いろいろあってってもう聞き飽きたよ

自分の事なのに誰に言い訳してるの

「NENASHIGUSA」/bacho

このあたりの歌詞は今の自分の生活とも重なるところがあって、響いていて。

-他にも歌詞の部分で好きな曲はありますか?

あとは「ショートホープ」でしょうか。

この曲もやはり躓いた時に立ち上がるという曲です。

自分もbachoと出会った2015年は仕事がきつい時で、平日は23時過ぎまで残業したり土曜日も出勤したり、ギリギリの状態でした。

今は部署が変わって少し余裕ができて、当時はしっかり聴く余裕のなかった歌詞も刺さるものばかりだと気づけてたんです。

-例えばどの歌詞でしょうか?

曇った窓の外を 

見つめながら男は

昔の話さって呟いて

過ぎた日々の確かさを

映った顔で確かめて

俺も老けたなと笑う

「ショートホープ」/bacho

というのが、まさに今の自分のことでもある気がして。

冒頭の方にも、昔は夢に向かって頑張っていたけどダメだったというような節があります。

僕も家にいて、休みの日に窓から曇った空を見つめて夢を追いかけた時代があったなと思いふける時があって、歌詞とそのままリンクしているなと感じます。

ただ、悲観的なだけではなく、またやっていこうという歌詞も全般的にあるんですよね。

-過去を否定するのではなく、それがあったから頑張っていくんだという感じもします。

そのあたりがすごく自分に効いていて、励ましてくれます。

-歌詞を紐解くと一気にバンドの魅力が増しますよね!

そうですね!

あとはなかなかライブではやらないですが、「いつかの約束」というのも良いです!

たった一人自分裏切らないように

自分で決めた言葉を反故にしないように

「いつかの約束」/bacho

この節はすごく激しく、訴えかけるように歌うんですが、あまりにも刺さりすぎるのでメンタルが弱っている時には逆に聴けないという(笑)。

-確かに!(笑)。

あとは、「これでいいのだ」という曲もお気に入りです。

これでいいのだ

これでよかったんだ

そう思う日まで続くのだ

「これでいいのだ」/bacho

これでいいのだ、これでよかったんだ、というのは普通に言えると思うんですが、そう思う日まで頑張っていくというところまで言及することってないじゃないですか。

-最後の各駅で進むというのもメッセージ性があって良いですよね!

そうですね。冒頭の詞の、

平日の午後の空白に

最寄り駅ホームで待ちぼうけ

三十分も来ない電車のせいで

人生ってやつを考えた

「これでいいのだ」/bacho

この部分も、姫路のローカル線での話で、快速列車と各駅列車の対比などが秀逸なんです。

-地元でこういうふうに考えることって、私達にもあるあるですもん。

bachoってローカルが一つキーワードで、地元から発信するというのがテーマ。

もちろん東京にもよく来ますが今まで上京はしたことがなく、地元にいることを選んでやってきたバンドなんです。

地元においても自分たちでフェスを開催するというよりは、他の人に結構呼んでもらってそこで地元愛を発信したり。

-なるほど!

あと、ライブで後ろにフラッグがあって、そこに「FROM LOCAL TO WORLD」という言葉が載っています。

地元から世界へということですが、実は「FROM LOCAL TO LOCAL」というフラッグもあるそうなんです。

地元から発信するというのが、バンドとしての軸なんですね。

bachoを漢字一文字で表すと「肯」

-最後に、恒例のbachoを漢字一文字で表すと何でしょうか?

「肯」ですね!

欽也さんは絶対に否定をしないんです。

ライブ中に大声を出したり、酔っぱらって迷惑をかけてしまったりする人がいた時に、「俺ももしかしたらそうかもしれん」ということを

MOROHAのアフロさんとの対談で言っていました。この対談もWebに上がってまして、とても良いので探してみてください(笑)

一度目はそれは気をつけようなと声をかけて、それでもダメだったら出て行ってもらうというスタンスなんです。

それが歌詞からも感じられるというのがあって、さっきも話しましたが1回目はダメだったけど立ち上がっていこうという節もあります。

-どん底ではないけど頑張りたい時に、bachoを聴いたら頑張れる気がします!

そうですね。bachoをブログなどで調べていると、いろいろな人がオススメ記事を書いてくれています。

それを見るのもすごく良いですよ!

Youtubeのコメント欄もすごく良くて、最後に一つ紹介させてください!

-ぜひお願いします!

「萌芽」という曲なんですが、

いろいろなコメントがありますが一番良いのが、

「なにもbachoのすばらしさを伝えるために、他を卑下する必要はないのでは。 bachoがいる、このローカルシーンがすばらしい。それでいい。このシーンが嫌いで他のシーンを好きな人もいる。それもそれでいい。」

-めちゃくちゃ良い!

bachoの意思を汲み取って、お客さんもそういう人が溢れているというのが何よりも良いなと思っています。

-bachoについて、本当にいろいろとお聞かせいただけました!本日はありがとうございました!

ありがとうございました!

bacho HP
http://bacho.jp/

取材協力:
nasunakaさん https://twitter.com/nasunaka02

インタビューワー:moolee(PARA CLASSIC)
https://twitter.com/mooleesan

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